セミナー情報

第41回ICTE情報教育セミナー in 新潟 ―メディア・リテラシーとICT―

日時:平成20年11月8日(土)  13:00~17:00
会場:新潟大学教育学部

研究会の様子

13:00~13:05 会長挨拶 水越敏行 (大阪大学名誉教授,関西大学特別顧問,ICTE会長)
         会場校挨拶 生田孝至(新潟大学理事・副学長)
13:05~14:45 ワークショップ(各コース同時進行)
(WS1)メディアリテラシーのカリキュラムをつくろう!
後藤康志(新潟医療福祉大学講師)
丸山裕輔(新潟県立生涯学習推進センター学習情報課社会教育主事)

最初に,活字メディアの例として新聞記事を取り上げた。同じサッカーの試合をもとにした2つの記事を見比べて,抜けている小見出しを各自考えた。異なる観点の見出しになることを確認した。
次に,小学校の低学年から大学生まで,どの段階でどんなメディアリテラシー教育ができそうかを書き,フロアから意見を述べ合った。
また,映像メディアの例として,アメリカとソ連が日本を映したときの映像の違いを見た。

コメンテータ:黒上晴夫(関西大学教授)

メディアリテラシーの構成要素は知識・スキル,思考,価値と考えられると述べた。
また,カリキュラムについては、合成されたイラク戦争の写真を例に,何をテーマと置くかで,どの学年でも題材となるのでは,と提案した。
・合成は良くない
・事実は何だったの? 写真は捏造だが、写真が伝えていることは事実
・文字は事実を正しく伝えるか?写真は?
・事実って何?
・恣意的な記事と捏造写真はどちらが問題化?
・問題の大きさを決める要因は何?
メディアリテラシーが質的に変わっていくという感覚を持って,シークエンスを作っていくことが重要,と述べた。


(WS2)デジカメ写真と俳句・川柳を組み合わせた表現活動
田邊則彦(慶應義塾湘南藤沢中・高等部教諭)
黒田卓(富山大学准教授)

ワークショップ2では以下のような活動を行った。
1.各自が持っている携帯電話のカメラ機能を用いて,新潟大学キャンパス内の風景を撮影する。
2.撮影した写真に俳句か川柳をつける。
3.携帯電話のメール機能を使って,予め講師から指定されたメールアドレスに作品を投稿する(写真は添付,メールの本文欄に俳句を入力)。
4.投稿された作品は電子掲示板上に逐次追加されていく。
5.ほかの参加者の作品を見合う。
6.撮影した写真を利用して,パソコンで簡単な動画作品を作る。
7.動画にBGMを追加する。
8.作品を見合って評価し合う。

以上の一連の活動を通して,参加者が体感したことは以下の通り。
1.予想以上にアップロードが簡単である。
2.「五七五」という制限があるので言葉を選ぶ。言葉を選ぶときの試行錯誤が面白い。
3.ケータイ禁止という学校もあるが,手軽なツールとして教室での携帯利用の効用を感じた。
4.同じ句でも組み合わせる絵によって印象がちがうことが実感できた。
5.カメラで写真を撮るつもりで外を出歩くと,普段気づかないことにも気づくことができる。
6.文字と画像の組みあわせで,その場の「音」を感じさせることに成功している作品があった。
7.写真を撮って俳句を考え,アップロードするという一連の活動に夢中になると,案外,このBBSがインターネットに公開されているということを忘れがち。その辺りの危うさを体感できた。
8.小・中・高・大学,どの段階でもこのワークショップはできるけれど,どこに指導のポイントを置くかで違ってくる。

※本ワークショップでは,アップルジャパン様に機材の協力を頂きました。






15:15~15:30 ワークショップ報告
WS1:後藤康志(新潟医療福祉大学講師)
WS2:黒田卓(富山大学准教授)
15:30~16:45 鼎談:メディア・リテラシーとICT
水越敏行 (大阪大学名誉教授,関西大学特別顧問,ICTE会長)
小平さち子(NHK放送文化研究所主任研究員)
生田孝至(新潟大学理事・副学長)
水越先生からは,世界各国・全国のメディアを活用した授業例の紹介があった。

小平先生は,イギリスの放送局がメディアリテラシー教育についてどのように取り組んできたかを紹介した。
・What’s This Channel4? (http://www.channel4.com/culture/microsites/W/wtc4/)
テレビ局の社員がどんな仕事をしているかを紹介している
・Blast(http://www.bbc.co.uk/blast/)
視聴者創作投稿参加サイト
・BBC NEWS SCHOOL REPORT(http://news.bbc.co.uk/2/hi/school_report/default.stm)
ニュース学習サイト
プロセスを重視することとプロや様々な機関と関わらせる場をつくるということがメディア教育において必要なのでは,と述べた。

生田先生より水越先生に,メディアリテラシー研究は先生にとってどういう位置付けか,と質問があった。
それに水越先生が答え,正しい答えを学ぶことはもちろん大事だが,それだけではなく,それをベースに「なぜ?」と考えることが重要で,身の回りのことを,問いをもって見つめていくことで,先人の叡智に触れるかもしれないし,今とのつながりを感じるかもしれない,と述べた。学校教育のどこでそれを設定していくかがたいせつであると述べた。

生田先生よりメディアリテラシーにクリティカルシンキングは外せないが,今おっしゃられたことはまさにクリティカルシンキングであるとまとめられた。

小平先生は,最後に,自分で考える,問いを持つ・作り出す,ということは,たとえ幼児でも年齢に応じたやり方でそういう思考が育てられるようにしなければならないと思うと述べた。


16:45~17:00 閉会挨拶 水越敏行 (大阪大学名誉教授,関西大学特別顧問,ICTE会長)